誰でも分かる!大学院生向け学術論文の投稿の流れとやり方|元院生が解説

研究

大学院生が奨学金免除を目指す上で重要な要素、それが「学術論文」

しかし

  • 論文ってどうやって書けばいいの?
  • どの雑誌に投稿すればいいの?
  • 論文が掲載されるまでの流れってどうなってるの?

などと疑問に思う方は多いと思います。

そこで、実際に論文を投稿した経験のある私が

  • 学術論文とは?
  • 学術雑誌とは?
  • 論文の投稿の流れ

について、誰でも分かりやすく解説していきます!

  • 論文投稿してみたい
  • 奨学金免除を目指している

方は、ぜひ目を通してみてください!

学術論文と学術雑誌について

学術論文とは

まずは学術論文とは何か?について説明していきます。

学術論文は、学術的な内容の研究成果を発表するためにデータや文章をまとめた文書です。

学術論文では論理的に研究内容や成果を伝える必要があるため、IMRAD型の文章構成をとります。

IMRAD(イムラッド):Introduction, Method, Result And Discussionの略で、

  • Introduction(導入)
  • Method(実験方法)
  • Result(実験結果)
  • Discussion(考察)

の4つからなる文章形式のこと。

学術論文ではこれらに加えて、Title(題名)Authors(著者)Affiliations(所属)Abstract(要旨)をIntroductionの前に、Conclusion(結論)をDiscussionの後に入れます。

さらに、文章の最後にAcknowledgements(謝辞)References(参考文献)が書かれています。

これを論文形式で図のように表すと下図のようになります。

ページ数は分野によりますが、理系の分野であれば長くても10ページ前後で収まることが多いです。

学術雑誌とは

学術雑誌は、ジャーナルとも呼ばれ、前述の学術論文を掲載する雑誌のことを言います。

有名どころだとNatureScienceなどがあります。

特定の専門分野を扱う雑誌が多いですが、前述した2誌については自然科学全般を扱う雑誌で、このような雑誌は総合誌と呼ばれます。

学術雑誌の影響度を示す指数:インパクトファクターとは

当然ながら、学術雑誌の中には前述した2誌のように、権威の高い雑誌もあれば、そうではない雑誌もあります。

その権威を表す指標として最も用いられているのが、インパクトファクター(IF)です。

インパクトファクターは、以下の式で表されます。

$$IF=\frac{ジャーナルの過去2年に掲載された論文の任意の年の総引用数}{ジャーナルの過去2年に掲載された全ての引用可能な論文数}$$

これだけでは「???」となるので、具体例を示していきます。

例えば、2018, 2019年にある雑誌で掲載された引用可能な論文の総数が合計1000件で、それらの論文の2020年における総引用数が2000件だったとすると、インパクトファクターは以下の計算式で算出されます。

$$IF=\frac{2000}{1000}=2$$

分子:2018, 2019年にある雑誌で掲載された論文の2020年における総引用数が2000件

分母:2018, 2019年にある雑誌で掲載された引用可能な論文の総数が合計1000件

インパクトファクターは、Clarivate Analytics社の引用文献データベースであるWeb of Science(WoS)に収録されたデータから算出されているので、データを閲覧するにはClarivate Analytics社が発行するJournal Citation Reports(JCR)の有料会員登録が必要です。

ただし、ほとんどの大学では有料会員登録されているため、気になった方は大学のPCなどからJCRのサイトにアクセスするなどして閲覧してみてください。

論文投稿の流れ

これまでは学術論文に関連する項目について説明していきました。

ただし

「学術論文については理解したけど、どうやって論文を投稿するの?」

と思われるかもしれません。

そこで、以下に論文投稿の流れを分かりやすく説明していきます。

⓪ 実験データを取る

そもそも、論文を作成するには研究を進めなければ始まりません。

  • 実験方法
  • 分析機器により得られたデータ
  • 結果から分かること

などが得られるのがこのプロセスです。

通し番号が「0」なのは、前提条件みたいなところがあるためです。

ただし大抵の場合は、自然にできていることが多いですので気にする必要性は低いです。

① 原稿を書く

得られた実験データをもとに原稿を書きます。

前述したIMRADの形式に沿って、英語で内容を書いていきます。

英語の文章で書くのはもちろん、

  • Introductionの書き方
  • Resultsのデータの見せ方
  • Discussionの内容
  • Referencesに載せる論文探し

なども頭を悩ませるところです。

一番大変なプロセスなので、根気強く取り組んでいきましょう。

② 掲載雑誌を決める

論文を投稿したい雑誌(ジャーナル)を決めます。

どの雑誌に投稿するかは、自分の研究室の教授などと相談しながら決めることになると思います。

その目安となるのが前述したインパクトファクターです。

具体的な数値の目安は研究分野によって異なるので一概には言えませんが、野球好きな私には面白いサイトがあったので引用して紹介します。

Cell/Nature/Science:特大ホームラン
Cell/Nature/Scienceの姉妹誌:ホームラン


Impact Factorが10以上:三塁打
Impact Factorが6以上10未満:二塁打
Impact Factorが4以上6未満:ヒット


Impact Factorが3以上4未満:四球/死球
Impact Factorが2以上3未満:振り逃げ/守備側のエラー


Impact Factorが1以上2未満:バッターアウト
Impact Factorが1未満:ベンチ入り(ただし打席には立てない)

引用元:http://biomedcircus.com/research_02_07.html

野球を知らない人のために簡潔に説明すると、

Cell/Nature/Scienceとその関連誌:世界に認められるほどの研究。

IF4以上:研究の価値があると言える最低限のライン。

IF2以上:評価されるかどうか微妙なライン。

IF2未満:「論文を出した」という実績しか得られないレベル。

という感じでしょうか。

そもそも「論文を出した」という事実があるかどうかは大きいので、IF2未満でも奨学金免除には有利になります。

しかし、一定の評価を得るなら最低でも3以上は欲しいところです。

いずれにせよ、研究レベルに合った雑誌を選択するといいと思います。

③ 添削・ネイティブチェック

作成した原稿を教授に添削してもらいます。

(人によってはここが1と2の間に来るかもしれません)

大学院生ですから、論文を上手く書けないのは仕方ないですが、その状態では通る論文も通らなくなってしまいます。

そこで、論文のプロとも言える教授に添削してもらうことで、論文として最低限仕上がります。

また、ネイティブチェックもしてもらうと万全です。

ネイティブチェックとは、英語のネイティブに英文の添削をしてもらうことです。

どんなに内容が良くても、下手な英文だと門前払いを食らう可能性があります。

そのため、教授の研究仲間に英語ネイティブがいるなら添削をお願いしてもらうのが吉です。

④ 提出

ネイティブチェックも終わったら、いよいよ原稿を提出します。

提出後は、査読という専門分野の研究者が、提出された原稿を読んで掲載の可否や修正点について判断する期間になります。

多くの場合、査読が終わるまで1〜3ヶ月間程度かかります。

⑤ 査読の結果連絡

査読が終わったら、編集者から結果の連絡が来ます。

査読者による査読の評価は大抵の場合、以下の4つのどれかになります。

accept:そのまま受理してよい。

minor revision:少し修正する必要あり。

major revision:大幅な修正の必要あり。

reject:掲載拒否すべきである。

編集者はこの査読者の評価を元に採否を決定し、著者に結果を伝えます。

採用:大抵の場合、査読者のコメントと共に返却され、何らかの修正(revise)を要求されます。著者はこのコメントにより示された改善点を期限内に修正して編集者に返送します。

不採用:この時点で掲載拒否(reject)となり、論文投稿のプロセスは終わりとなります。今後はこの内容で別の雑誌に再投稿するか、この内容での論文投稿を諦めるかを決めることになります。

⑥ 修正・返送

採用の場合は、要求された修正を十分に行って編集者に返送します。

修正の内容によっては、追加実験が必要になることがあるので、その場合は最優先で追加実験を行いましょう。

修正が不十分な場合は再び査読となることがあるので、修正はしっかりと行う必要があります。

また、再び査読に回った後もmajor revisionになると自動的にrejectとなる場合もあるので注意です。

⑦ 受理・出版

修正が十分に行われ、論文掲載してもよいと判断されると、編集者は著者に受理(accept)したことを伝えます。

この時点で、論文投稿の実績として扱われるため、奨学金免除の申し込みまでに受理された場合はこの実績を書くことができます。

受理された原稿は、雑誌に掲載するための構成に直され、校正が行われた後に出版されます。

これで論文投稿のプロセスは終わりとなります。

まとめ:結局、一番大変なのは原稿づくり

というわけで、学術論文と論文投稿の流れを解説していきました。

内容を以下にまとめます。

  • 学術論文は、論理的な形式で研究成果を伝えるために書かれた文書
  • 学術雑誌は、学術論文をまとめて掲載する雑誌で、その権威性を表す指標としてインパクトファクター(IF)がある
  • 原稿の提出後、専門分野の研究者による査読が行われ、採用か不採用かが決まる
  • 採用後に十分な修正が行われたと判断されたら受理(accept)され、論文掲載が決まる

論文投稿は労力の大きい作業です。

原稿を作る部分が大部分を占めますし、それだけでも非常に大変です。

その上、書き始めてから掲載が決まるまで1年かかることもあります。

しかし、乗り越えた先には「自信」と「実績」が得られます。

奨学金免除を狙う方なら、本記事のプロセスを片隅に入れておくと良いかもしれません。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!

コメント

タイトルとURLをコピーしました